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2000年

*発毛剤開発戦争

■発毛剤開発戦争
犯罪への応用を警戒

【2000/1/15=光デパート】効果の有無から効果の速度へ・・・次世代の発毛薬をめぐり、製薬会社各社の開発競争が熾烈になってきている。
現在全国の薬局で大人気となっている壮年男性向け発毛剤だが、半年以上の継続使用を経て初めて効果が現れるなど、その遅効性に消費者からは不満の声が上がっている。そのため、後発各メーカーは挽回を期すべく、効果の即効性を売り物にした発毛剤の開発を急ピッチで進めている。
業界誌「月刊発毛新聞」のスクープによると、米ファイザー社では既に、数時間で1メートルの毛が伸びる驚異のスピード発毛剤の試作品を完成しているという。同社は否定も肯定もしていないが、もしこの新薬が発売されれば業界地図は一気に塗りかえられることになりそうだ。

発毛新聞のスクープ記事によると、このスピード発毛剤に注目しているのは、製薬会社や壮年の男性だけではない。各国の軍隊、特に空挺部隊を持つ軍隊では、この新しい即効性の発毛剤に大きな期待を寄せている。
イギリス軍の試算によると、5メートルの体毛が全身に生えることで、パラシュート無しで高度数千メートルから地上への降下が可能になるという。全身に天然のクッションを纏っているため、最も危険な着地時点の事故を防ぐことも可能だ。
イギリス軍では空挺部隊だけでなく、さらに一歩すすめて歩兵の「剛毛武装化」まで視野に入れている。軍の研究によると、鼻毛の硬度を持つ体毛を全身に10メートル纏うことで、地雷、手榴弾、軽機関銃の連射等の被弾から兵士を守ることができるという。
「この究極の武装における問題はただ一つ」アンダーセン軍事研究所のマッカム主任研究員は語る。「蚤、虱といった生物兵器に弱いということです」

スピード発毛剤は、医薬分野、軍事分野だけではなく、産業分野での応用も検討されている。
米フォード社では、製薬会社と共同で「スーパースピード発毛剤」の開発を進めている。この「スーパースピード発毛剤」は、ファイザー社のスピード発毛剤の数万倍の速度、ミリ秒あたり数センチという驚くべき発毛速度を誇るといわれている。
フォード社では、まずエアバックの代用品として、衝突時に瞬時に発毛剤を車内にふりまくシステムの導入を検討している。衝突時から搭乗者がフロントパネルもしくは椅子に激突するまでのわずかな間に、車内を体毛で埋めつくしてしまおうという発想だ。
さらにフォードでは、対人事故対策として、衝突時にスーパースピード発毛剤を車外に噴霧するシステムも検討している。歩行者は毛に包まれ、車が衝突してもピンポン玉のように跳ね返るだけだ。

様々な分野での活躍が期待できるスピード発毛剤。だが、犯罪への応用についても警戒せねばならない。
先日、葛飾区内のペットショップ店店長が、犬種を偽ってペットを販売したとして詐欺罪の容疑で逮捕された。
ペットショップからゴールデンレトリバーを購入した都内の女性によると、購入から数週間後に全身の毛が抜け始め、1ヶ月後には中から猫が出てきたという。「体格のわりに小食なうえに、炬燵に入ろうとするので不審には思っていたのですが」被害を受けた女性は語る。苦情を受けた警察は、ペットショップ店長である佐々木容疑者が薬店で大量の発毛剤を購入していたことから、猫に発毛剤をふりかけゴールデンレトリバーを捏造していた事実を突き止めた。同ペットショップでは他にも、同様の手口で組織的にペットの捏造を行ってきたと警察は見ている。
今年になって発毛剤をかけたクマネズミをハリネズミと称して販売したり、頭部に脱毛剤をかけたトビをハゲワシと偽って売りつけるなど、余罪は数十件におよぶと考えられ、警察では厳しい取り調べを続けている。


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