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1997/5/2
プラットフォームをスーパーファミコンからプレイステーションに移し、新しい展開が期待されるＲＰＧ
のスタンダード「ドラゴンクエスト」。
ゲーム雑誌への情報公開はまだ先の話ですが、開発は着々と進んでおり、このほどモニターとしてリリース
前の試作版をプレイする幸運に恵まれました。
このページは、開発者とモニター数名の間で意見を交換するために極私的に立ち上げた日記です。
私自身の都合から、基本的に週末のみの更新となるでしょう。また、なにぶん開発途中のソフトで
あるため、ストーリーが中断したり変更されたりといったことは頻繁におこると思います。
何はともあれ、名作ＲＰＧの制作過程にこのような形で参加できることは、ゲームプレイヤーとしての
本懐。モニターとしての責務を果たしつつ、おおいにこの醍醐味を味わおうと思います。
さて、本日モニタ版のCD-Rが到着しました。マジックで手書きされたシリアルナンバに、選ばれた
プレイヤーとしての優越感がフツフツと湧いてきます
はやる気持ちを押さえてプレステをセット。CDが軽い唸り声をあげて回転しはじめてすぐ、あの
聞きなれたテーマが響き渡ります。さすが、SFC版とは段違いの音のよさ。音楽ＣＤと比較しても
遜色ありません。
β初版ということで、今はまだ名前入力も「ぼうけんのしょ」へのセーブもできない状態。いきなり
町の中にほうりだされてしまいました。
まだ町の住人もいない状態なので、フィールドに出てファーストバトルへと備えます。
さて、お約束のスライムとの遭遇。これはもう「再会」の儀式といっても過言ではない
ですね。スライム君の姿は、今までのシンプルさを忠実に踏襲。確かに、ポリゴンやテクスチュア貼り付けた
スライムはヤですよねぇ。
まだ武器をもっていないので、素手で戦いを挑みます。ちょうどHPが2/3程度になったところで勝利。
ここらへんのバランスも今までどうりです。
２匹目のスライムを倒したところで宿屋で睡眠。この時に流れるテーマが、また懐かしい！。
翌朝、北の森に向かおうとすると、何やら高い共振音のようなものが聞こえます。
フィールド上にある黒い塊に近づくと、それがハエの羽音であることに気づきました。
突然、戦闘シーンに切り替わります。ちいさな子供スライムが、５匹現れました。
「なぜママをころしたの？」
「おかあちゃんを、かえせ」
ハエがたかるスライムの死体を背景に、子供スライムがダメージ０の攻撃を続けます。
呆然と画面をみつめていると、やがて子供スライム達は死体にすがり、泣き始めました。
「みつこ、みつこおおおおお」年老いた親スライムが号泣しながら駆け寄って来ます。
遠まきにこちらを見つめるスライムの群衆の視線が、痛いほど突き刺さります。
たまらず「逃げる」コマンドを選択。フィールド画面に戻って北の森の方向を見ると、
１０体ほどのスライムの死体が横たわっていました。その脇を通り抜けなければならないと思うと、
暗澹たる気持ちになります。
1997/5/3
北の森を抜けると、隣街への関門としてダンジョンがそびえ立ちます。勇気を奮って中に入ると、
「くさったしたいが あらわれた」のメッセージ。
スライムと異なり、くさったしたいにはテクスチュアが貼りつけられているようです。
テクスチュアをよく見ると、それは顎に手を添えた太宰治の写真。太宰治に対しとくに
思い入れのない私は、さっさとどめを指します。
戦闘を終えて前に進もうとすると、くさったしたいの「死体」（何だか変ですね）のまわりに、
思い詰めた表情を浮かべた男女がワラワラと集まってきました。彼らは、横たわった太宰の
死体を見つめていたかと思うと、あるものはナイフを自らの胸に突き立て、あるものは薬を飲み、
次々と後追い自殺。こりゃたまらんわと、そそくさとその場を離れます。
しばらくするとまた「くさったしたいが あらわれた」のメッセージ。今度のテクスチュアは
「尾崎豊」。戦闘開始直後だというのに、思い詰めた顔のファンがワラワラと集まりはじめました。
勘弁してよと「逃げる」コマンドを連打。「なぜ君は逃げるんだ」尾崎の声（サンプリング）
を背にして、ひたすらダンジョンの中を逃げ回ります。
1997/5/10
土曜日にβ版第二版が到着。街の人とも会話ができるようになり、
ようやくストーリィらしき流れが汲み取れるようになります。
まずは、かつての仲間さがしが第一目標。過去において、主人公との間に
様々なしがらみがあったようなのですが、それはおいおい明らかになる
ことでしょう。
心強いのが「武器屋」の出現。これでようやく、素手による戦闘から開放
されます。
早速、武器屋で「長剣」を購入。防具をととのえ、試し切りにフィールドへと向かいます。
フィールドを往復していると「おおなめくじ」に遭遇。バシ！いきなり、長剣
による「かいしんのいちげき」がヒットしました。１２ポイントのダメージをあたえて
おおなめくじを撃退。すると、画面がいきなり実写ムービーへと切り替わります。
白装束で白色に輝く熱い鉄を鍛練する刀鍛冶の姿。鍛冶師が
鋭い目で砥石に刃をあて、刃先の感触を指先でなぞるようにして
確認する画面に、キャプションがかぶります。
「伝統の切れ味。関の孫六。」
どうやら、今回のドラクエは企業タイアップ制を導入しているようです。
そういえば、街の宿屋は「ホテルニュー越谷」でしたし、薬草を購入
した店は「三千里薬局」だったような気がします。
気になったので、システムコマンドで「そうび」を選択し、身につけて
いる「くさりかたびた」を確認します。
「そうび」画面で「ぽうぐ」を選択すると、くさびかたびらがポリゴンで
表示されます。すると、胸に「MICHICO LONDON」のマーク。
目の前が暗くなりました。
1997/5/11
さて、港町アルドルガに到着し、「地曳き網でＵボート引き揚げ」イベント
をクリアすると、中年の男が馴れ馴れしく近寄ってきます。
「よう、おれだよ、まりお だよ」
赤い帽子に赤いオーバオール。青い目にタワシひげ。
まちがいなく、あのマリオです。
「さいきん けいきが わるくてさ」
そうでしょうね。
「おれも もう としだし とんだり はねたりの
えんぎは つらいよ」
ハイライトに火をつけ、つらそうに自分の肩を揉みます。
「しぬまでに もうひとはな さかせたいもんだ」
「よう、きょうだい そこで そうだんなんだが」
なんでしょう。
「この げえむ にてんど６４に いしょくして くれよ（はい／いいえ）」
ためしに”いいえ”を選らんでみます。
「ちぇ しけた やろうだぜ」
ふてくされたマリオは、その場を立ち去ります。
「ねえ おねがいがあるの」
ふりかえると、胸の前で小さく手をあわせる、可憐なピーチ姫が
たたずんでいます。
「どらくえを にてんど６４に いしょくして ほしいの（はい／いいえ）」
ここは態度を一貫させて、”いいえ”を選らびます。
「しょせん そのていどの ひとなのね えにくす」
えにくすって誰でしょう？
機嫌を損ねて立ち去るピーチ姫にかわり、クッパ大王とクリ坊が
集団であらわれ土下座。
「おとこと みこんで おねがいします どうか にてんど ６４に
いしょくして ください」
却下。
すると今度は、クッパ達の間をかきわけ、工場の作業着のような上着を
羽織った真面目そうな男が近づいてきます。
「任天堂の宮本茂です」いきなりフォントが違います。
「ゲーム業界の健全な発展のためには、一つのハードが市場を寡占するのは
よろしくないと考えますが、いかがでしょう？」
任天堂の社員がそれを言いますか。宮本さん。
「ついては、プレイステーションの暴走に歯止めをかけるためにも．．．」
却下。
突然、「ツァラトゥストラかく語りき」のテーマが流れます。
マリオ、ピーチ姫、クッパ大王一味、宮本さんがささっと道をあけ、
片ひざをついてかしづきます。
その真ん中を、眼鏡をかけた白髪の男がずずずいと歩みよってきます。
「あのね、君」
任天堂の山内社長です。
「しょせんラジオ屋にゲームはわからんだろう。クズゲームを大量にたれ流しては
アタリショックの二の舞。ゲーム界の盟主たる任天堂がユーザに対し良質なソフトを
厳選し、．．．．．」
話が長くなりそうなので、ほっておいてその場を立ち去ります。
ふと傍らを見ると、柱の影から糸井重里がこちらを注視しています。
事の次第を見定めた糸井重里はニヤリと笑い、煙草に火をつけるとその場を
立ち去りました。
1997/5/17
いよいよ世界地図が手に入りました。ＳＴＡＲＴボタンでチェックすると、
主人公がいるパンゲア大陸の街々はあらかた訪問済み。
そろそろ、海を渡って別天地へと旅立つ時がきたようです。
「リゾートビーチ ショウナンから ふねに のってゆけ」
村の老人から受けたアドバイスを思い出しました。でも、ショウナンなんて
名前の町は、たしかこの大陸には無かったような．．．．
「ショウナンのことは わかだいしょうに きくといいわ」
サガミハラ地方の町、フジサワでご婦人から貴重な情報を得ました。
婦人のあとについてイトウヨウカドウに入り、１０００ゴールドで
「エレキだゴーゴーわかだいしょう」のＣＤを購入します。
「どうぐ」コマンドで「ＣＤぷれいや」を使うと、一瞬画面が暗転し、
ベンチャーズのギター節とともに、見知らぬ青年が目の前に現れました。
「ぼくを よんだのはきみかい？ ぼかあ しあわせだなあ」
どうやら、彼が「わかだいしょう」のようです。
「ぼかあ ここフジサワにある じょうなんだいがくに かよっているんだ」
わかだいしょう、こんな地味な町が舞台で、不満はないのですか？
「へへへへ わかだいしょう おまえには 小田急線沿線 フジサワが おにあいだぜ」
いつのまにか別の男があらわれ、憎まれ口を叩きます。
「フジサワを わるくいうのは ゆるさないぞ あおだいしょう」
どうやら 彼はわかだいしょうのライバル、あおだいしょうのようです。
「へへへ このごじせいに バスつうがくとは ごくろうなこったぜ」
「うぬう それなら こうだ！」
わかだいしょうが「まほうのウクレレ」を奏でると、じょうなんだいがくが、
じょうなんだいがくショウナンフジサワキャンパスに変身です。
「あわわわわ」うろたえる あおだいしょう。
「湘南藤沢キャンパスは、大きく転換するメディア環境に対応し、
既存の学問の成果を横断的に再編成する全く新しいコンセプトに
基づく研究・教育の場として、
総合政策学部と環境情報学部の２学部を擁し、コラボレーションを
通して自ら問題を発見・解決し、さまざまな情報を知識として
体系化できる能力の開発を行っているのさ。」
「げえええ」あおざめる あおだいしょう。
「ここには ＣＯＯＬなＥ−ＺＩＮＥ、
ラブフォントや
LOGIC OUT
だってあるんだぜ」
「くそう かなわねえや おぼえてやがれ わかだいしょう」
あおだいしょうは、そそくさと退散です。
「わははは そういうわけで ぼくがいるところは そこがどこであっても ショウナンなのさ」
わかだいしょうの白い歯がキラリとこぼれます。
「さあ よっとに のって しんたいりくへと たびだとうか」
ここって、サガミハラ台地じゃなかったでしたっけ、わかだいしょう？
1997/5/18
わかだいしょうの豪華クルージングヨットに乗った一行は、一路新大陸を目指します。
「しびれくらげが あらわれた！」
海のやっかいもの、しびれくらげの登場です。
しびれくらげは、「まひ」攻撃で足止めするだけでなく、ときおり仲間を召喚する
特性があるため、長期戦は避けたいところです。
「しびれくらげＡへの こうげき！」
「かいしんの いちげき！」
「しびれくらげＡを やっつけた！」
まずは、一匹撃破。
「しびれくらげＢは なかまをよんだ」
「グリーンピースが あらわれた」
ゴムボートに乗った数人の男女が舳先から近づきます。
「グリーンピースＡへの こうげき！」
「グリーンピースＡは うみにおちたが ロープでからだを
ヨットにくくりつけた」
「グリーンピースＢは なかまをよんだ！」
「ＣＮＮが あらわれた」
いつのまにか、カメラマンを乗せたヘリが上空を旋回しています。
「ＣＮＮは じっとこっちを さつえいしている」
「しびれくらげＢは たいどをいっぺんし かよわい やせいどうぶつを
えんじている」
「グリーンピースＡは ロープでからだをヨットにくくりつけている」
「グリーンピースＢは
”しびれくらげは絶滅の危機に瀕している！”
との おうだんまくを かかげた」
何だか戦況は不利な展開を見せているようです。
とりあえず、弱そうなＣＮＮを叩いて敵の数を減らす作戦にでます。
「ＣＮＮへの こうげき！」
「ＣＮＮは １０ポイントのダメージ」
「ＣＮＮは なかまをよんだ」
「こくさいよろんが あらわれた」
たまらず「にげる」を選択。ところが
「にげられない！」
「こくさいよろんは ごうごうと ひなんしている」
「ＣＮＮは じっとこっちを さつえいしている」
「しびれくらげＢは かよわい やせいどうぶつを えんじている」
「グリーンピースＡは からだをヨットにくくりつけている」
「グリーンピースＢは おうだんまくを かかげている」
あとは逃げることもできず、ひたすら増えてゆく敵を眺めるばかり。
ＣＮＮにつづいてＢＢＣ、少し遅れてＡＢＣとＣＢＣが現われ、だいぶ
おくれてＮＨＫその他のマスコミが登場。もはや空も海も大混乱です。
そのうちテレビ朝日が単独インタビューを申し込んできました。
「きれいな ゆうひだなあ。ゆうひをながめながら かれらに
ぼくのうたを きかせてあげよう」
そんな場合じゃないんですってば、わかだいしょう。
1997/6/7
「ルイーダのさかばで なかまがまっている」
ルイーダの酒場。パーティの仲間と出会い、別れる場所。
ようやく、パーティを組んで戦うことができるようです。
宿屋で体力を回復し、早速酒場に向かいます。
酒場の扉を開けると、カウンターに客が一人。
初老のサラリーマンといった風情。彼は仲間なのでしょうか？それとも、ただの客？
とにかく、話しかけてみます。
「初めまして。私はこういうものです」眼鏡をかけた、物静かな男性です。
手渡された名刺には、「経済市場研究会 キジマ」とあります。
はて、どのような職業なのでしょう？
「私どもこのような機関紙を発行しておりまして・・・
もしよろしければ、定期講読などいかがでしょうか？」
手渡された雑誌は、薄いＢ５版の紙面に文字がぎっしり。
「モンスター研究。キメラの光と闇」
「どろにんぎょう業界に蠢く闇の勢力」
などの表題がおどります。
「こちら一般書店ではお求めになれさせん。お申込みになられた方にのみ、
定期講読という形でお届けいたします」
「年間講読１０万ゴールドほどになります。きっとご満足いただけると思いますが」
ご満足も何も、そんな大金はありません。
「そうですか、そうですか、それは残念だ」
男は柔和な微笑みを漏らすと、カウンターに戻りました。
カウンターごしにマスターに話しかけても、何も情報は無し。
結局、仲間に出会うこともなく酒場を後にします。
これからも、一人で戦い続けるのでしょうか。
しかたなく、フィールドにでて戦闘開始。
やはり、この大陸の敵はつよい！やっとのことで、マンドリルを撃退します。
「ほほう、そうですか。武闘派の方だとは」
振り返ると、酒場にいた初老の男が拍手をしながらこちらを見つめています。
「そうですか、そうですか、これはいいパーティが組めそうだ」
どういうことでしょう。
「そうかいやが なかまにくわわった」
どうやら、初老の男の職業は総会屋のようです。
とりあえず町にかえろうとすると、またマンドリルが出現。残りＨＰはあとわずか！
このままでは、すぐやられてしまいます。
「まあここは、私におまかせを」
「そうかいやは、マンドリルＡにちかづいた」
「そうかいやは、マンドリルＡに なにかを わたした」
「マンドリルＡは とまどっている！」
「マンドリルＡは マンドリルＢと そうだんしている」
「マンドリルたちは にげだした」
「最初は、こんなものでしょう」
何を渡したのですか。
「いやなに、株式会社モンスター協会への公開質問状ですよ。運がよかったですね。
今であったマンドリルは、総務出身ですな」
翌日、フィールドに出ると、すぐさまマンドリルがあらわれ、総会屋に何かを手渡すと足早に去ってゆきました。
「２０００ゴールドを てにいれた」
あれ、戦いもしないのに？
「ああ、戦う必要はないの。総会が近いからね、今は我々のいいなり」
「しかし２０００ゴールドとはなめられましたね。
明日は、総会に出席して株主としての威厳を示さねばなりませんな。
それでは皆さん、明日もよろしく」
「ぼかあ このやりかたには なっとくいかないなあ」
ルイーダの酒場で、わかだいしょうは不機嫌そうに酒をあおります。
たしかに、これでは楽しいことなどありません。
戦いなしでは、いつまでたっても今のレベルのままです。
パーティから、総会屋をはずしましょうか？
「まあまあ皆さん、そうあせらずに、まずはこれをごらんになって」
いつのまにか総会屋があらわれ、封書を手渡すと去ってゆきました。
公開質問状
・民家に不法進入し、タンスを物色することと勇者としての
倫理性について
・形勢不利になるとリセットし、「ぼうけんのしょ」から
やりなおすことの倫理性について
・わかだいしょうの髪の毛の．．．．
わかだいしょうは突然公開質問状をとりあげ、ビリビリと破り捨てました。
「ぼかあ なかまを しんらいするこころが たいせつだと おもうんだなあ」
さわやかな笑顔だけど、ひきつってますよ。わかだいしょう。
1999/3/27
「今年はいよいよドラクエ発売の年となりました。モニター参加者の方々に
おかれましては、最終段階に向けいっそうのご協力をお願いする次第です」
株式会社えにくす拝
忘れていました。そうか、今年はドラクエ発売の年です。
２年ほどモニターの役目をサボっていましたが、今年発売とあってはクリア しなければなりますまい。
早速同封のＣＤ−Ｒをプレイステーションにセットし電源を入れます。
最新日付の「ぼうけんのしょ」をオープン。プレイしつつ、記憶の中で 前回までのストーリーを反復します。
ええと、確か総会屋をパーティーに加えて株主総会に向かう途中でしたね。
さて、一行は「ほてるおおくら ほうおうのま」にたどりつきました。
総会屋が戦闘中に「みかたのふりをしておちかづきになりよわみを にぎりなだめすかしてなおかつおどす」のコマンドでモンスターから もぎとったアイテム、「えにくすの株」が役にたつときが来たようです。
会場に入ると、社員らしきキメラが席へと案内。
「席の配置が大事なんですよ。ほら、前列に陣取っているのが、 社員持株会のモンスターたち」
なるほど、まばらな参加者の中で、まるで壇上を人垣のように囲んで すわるモンスター達がいます。
総会がはじまりました。議案が議決にかけられる度に、前列の モンスターがそろって「異議なし！」と叫びます。
典型的なシャンシャン総会のようです。
総会も終了という頃、会場内になにやら異様な匂いが漂ってきました。
見渡すと、後ろのほうがなにやら騒がしいようです。誰かが会場の 入り口で警備員相手にもみ合っているようです。
「あれは すらいむだと おもうんだなあ」
わかだいしょうが身を乗り出して確認します。
そのうち、警備員ともみあっていた乱入者が制止をふりほどき、 壇上にかけあがりました。
「あなたたち！」
年老いたスライムが、こちらをキっとにらみます。
え？あなたたちって、僕らのことですか？
「あなたたち、これは あなたたちが ころした むすめの みつこですよ！」
老婆スライムが、ミイラ化し異臭を放つスライムの死体をつきつけます。
おかあちゃん！！たどたどしい足どりで死体に歩みよる子供モンスター。
泣き叫ぶ子供達に、社員持株会のモンスターたちも思わずもらい泣きをしています。
「あなたたちの おかげで これから おやのない こどももんすたーが どれだけ でてくると おもっているの！」
いやまあ、そりゃそうなんでしょうが．．．
「たたかいは もうたくさんよ！
これいじょう ぎせいをださずに はやく せかいでも なんでも すくってちょうだい！」
感極まった会場のモンスター達がいっせいに立ちあがり拍手を送ります。
「それでは ぎけつを とります」
突如、議長が決をとり始めました。
「いまから そくじ さいしゅう ぼすせんに さんせいのかた きりつ してください」
いや、ちょっと待ってくださいよ．．．
「さんせいたすう よって ほんけんは せいりつし いまから さいしゅう ぼすせんと し ます」
えええええええ！！
1999/3/28
画面が暗転し、どうやらボス戦が始まったようです。
ところが、しばらくたっても画面が暗いままで何もあらわれません。
「・・・どうすんのよ、これ」
真っ黒なモニターの背後で小さな声がします。
「・・・今からどうにかしてくれって、そんなこと聞いてないよ」
どうやら、男達がヒソヒソ相談しているようです。
突然モニターに明かりがつき、一人の中年男がびっくりしてこちらに振り向き ました。
「え？！あ、あああ、こんにちは、堀井雄二です」
ドラゴンクエストのシナリオを手掛ける、伝説のゲーム作家 堀井さんではないですか！
「いやすみません、実の話、まだシナリオできてなくて、ラスボスも 決まってないんですよ」
そうですか、それでは次のモニターＣＤが来るまで待ちましょう。
「お待たせするのも何でしょうから、とりあえず、私がラスボスって ことで我慢してください」
なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい？！
ほりいゆうじが あらわれた！
1999/4/3
ラスボス 堀井雄二との決戦 ！
傍らには、「とりやまあきら」と「すぎやまこういち」が控えています。
そうかいやの こうげき！
そうかいやは、みかたのふりをしておちかづきになりよわみを にぎりなだめすかしてなおかつおどした！
ミス！
「いやあ、組織の論理が通じない、個人事業主には弱くてね」
いちいち言い訳をする男です。
「ぼかあ そういう たたかいかたは よくないと おもうんだなあ」
わかだいしょうの こうげき！
わかだいしょうは なごや めいぶつ すがきやの てーまを うたった！
かいしんの いちげき！
「こりゃあ どえりゃあ たまらんでえ」
とりやまあきらは すがきやが こいしくて なごやにかえってしまった！
「らすぼすせんは まわりの てきから たおすのが うみの おとこの てっそく なんだなあ」
わかだいしょうは まほうのえれきぎたあを かなでた！
召喚獣ニチゲキウェスタンカーニバルが あらわれた！
召喚獣ニチゲキウェスタンカーニバルのえんそう！
すぎやまこういちは ぐるーぷさうんず じだいが とても なつかしくなった！
すぎやまこういちは ぐるーぷさうんずの おもいでに ふけっている！
そうかいやの こうげき！
ほりいゆうじは １４３ポイントの ダメージ！
「意外と弱いですね。ラスボスだというのに」
総会屋が憎まれ口をたたきます。
ほりいゆうじの こうげき！
「・・・・・・ちょっとこれ、パラメータのバランスが悪いな」
ほりいゆうじは ぱらめーたの さいけんとうを はじめた！
しゅじんこうの ＨＰさいだいちは ２０ぽいんとに なった！
ほりいゆうじの ＨＰさいだいちは ２０００ぽいんとに なった！
ちょっと待ってくださいよ何ですかそれは。
ほりいゆうじの こうげき！
「え？発売予定日？誰も守るなんて思ってないでしょ」
ほりいゆうじは ぱらめーたの さいけんとうを はじめた！
しゅじんこうの ＨＰさいだいちは ７ぽいんとに なった！
ほりいゆうじの ＨＰさいだいちは ３４０００ぽいんとに なった！
その後パーティーは堀井雄二の素手攻撃で全滅、ゲームオーバ となりました。
1999/4/4
ゴールドも半分になり、しかたなくルイーダの酒場で 安酒をあおってくだを巻きます。なんですかこのクソゲーは！
「なあ、にいさん そう おちこむな」
気がつくと、隣の席に中年の男が腰をかけています。
赤い帽子にたわしひげ、間違いなく、あのマリオです。
「さくしゃが あいてじゃ かちめはないわな」
そういいながらマリオは、百円ライターを指でころがしています
「よう きょうだい そう くさらずに おれのはなしを きけよ」
なんでしょう？
「ほりいゆうじも いちげきで たおす でんせつの せんしが いるって はなしだぜ」
だ、誰なんでしょうその戦士は。
「おしえて あげても いいんだが そのまえに．．．．．」
ハイライトに火をつけ、大きなわっかを吐き出します。
「この げえむ にてんど６４ＤＤに いしょくして くれよ（はい／いいえ）」
・・・・・・・・・・
背に腹は変えられません。しぶしぶと、ＹＥＳにカーソルをあわせます。
すると盛大なファンファーレが鳴り響き、くすんだ場末の酒場だったルイーダがまばゆいばかりの光に包まれます。
どこからともなく無数の美女が現われ、ラインダンスを踊り始めました。
店の奥では、バニーガールに囲まれながら ブランデーグラスをかたむける、満足げな山内社長の顔も見えます。
「さすがは おれの みこんだ おとこ そう いってくれると おもったぜ」
マリオは灰皿に吸い殻を押しつけると、満足そうに大きな煙を吐きます。
それはそうと、伝説の戦士はどこにいるのでしょう？
「おもいたったが きちじつだ やつはもう ここにきているぜ」
マリオが指笛を吹くと、店の奥から男があらわれました。
「あ、ども、このサイト”大嘘百貨店”の作者、光デパートです」
乱一世と所ジョージを足して２で割ったような、何だかたよりのない男です。
「堀井雄二？ああ、妙な髪型に安めのサングラスをした男ですね。」
外見で人を判断する品の無い男です。
「ラスボス戦でしょ？んじゃまあ、サクっと終わらせましょうか」
本当にこの男で大丈夫なのでしょうか？
1999/4/10
光デパートがパーティに加わりました。
どうも信用できない男ですが、スタスタと先にすすんでいくのでしかたなく 後をついて行きます。
そうこうしているうちに前回の決戦の地、ほてるおおくら ほおうおうのまにたどり着き ました。
「ええと、まだシナリオは上がってないんですよ。そんなわけで今回も 私で我慢してください」
ほりいゆうじが あらわれた！
「フフフフフ、ＷＥＢＭＡＳＴＥＲにはりあえる敵などいませんよ」
ひかりでぱあとの こうげき！
ひかりでぱあとは ＜ＦＯＮＴ ＳＩＺＥ＝１＞を となえた
ほりいゆうじの こうげき！
「・・・・・・ちょっとこれ、パラメータのバランスが悪いな」
ほりいゆうじは ぱらめーたの さいけんとうを はじめた！
「うははは、読めませーーん、文字が小さくてぜんぜんよめませーーーーん」
ひかりでぱあとの こうげき！
ひかりでぱあとは ＜ｔａｂｌｅ ｗｉｄｔｈ＝１００％ ｂｏｒｄｅｒ＝０ ｃｅｌｌｐａｄｄｉｎｇ＝２４＞＜ｔｄ ｒｏｗｓｐａｎ＝５ ａｌｉｇｎ＝ｃｅｎｔｅｒ ｗｉｄｔｈ＝９０％＞＜／ｔｄ＞＜ｔｄ ｒｏｗｓｐａｎ＝５ ａｌｉｇｎ＝ｃｅｎｔｅｒ ｗｉｄｔｈ＝１０％＞＜ｆｏｎｔ ｓｉｚｅ＝１＞をとなえた！
ほりいゆうじの こうげき！
「・・・・・・ちょっとこれ、パラメータのバランスが悪いな」
ほりいゆうじは ぱらめーたの さいけんとうを はじめた！
「あれえ、堀井さーん、どこいちゃったんですかあ？」
ひかりでぱあとの こうげき！
ひかりでぱあとは ＜ｆｏｎｔ ｃｏｌｏｒ＝”＃ＦＦＤ８Ｅ０＞をとなえた！
ほりいゆうじの こうげき！
「・・・・・・ちょっとこれ、パラメータのバランスが悪いな」
ほりいゆうじは ぱらめーたの さいけんとうを はじめた！
「あれえ、ぜんぜん見えませんね。背景色と同化しちゃいましたね」
その後も執拗なＨＴＭＬタグ攻撃を受けた堀井雄二は、為すすべもなく倒れました。
「ま、こんなもんですか」
光デパートは、ねっ転がりながら柿ピーを食べています。
ドラクエもこれで終わりなのでしょうか？