日本。

 ここ10年程の間に、私たちの日本に対する理解は随分と深まりました。それは日本の 政治、経済面における国際的プレゼンスの高まりと無縁ではありません。 私たちアメリカ人は、日本の急速な成長に対し、半ば敬意を、半ば脅威を感じつつ、 日本に関する情報を集め、より理解を深めようと努力を続けてきました。

 我々にとって、もはや日本はエキゾチックで神秘的な東洋の島国−ゲイシャ・ガール、 スモウレスラー、ニンジャが闊歩するサムライの国−ではありません。今アメリカに おいて最もポピュラーな日本イメージは、ホンダであり、ソニーであり、優秀な工業 製品を安価に、効率よく生産する先進国のイメージです。その反面、画一的、没個性的な 文化、貧弱な家庭生活など、日本社会の否定的な部分について喧伝される機会もまた、 増加していますが。

 今やアメリカ人にとって、日本という国あるいは日本人は、異質で理解不可能な何か ではありません。マスコミ等のメディアを通じ、一般市民の日本に対する新しいイメージ は着実に形成されつつあります。


 しかし、私はこの点に危惧を感じます。

 私たちは本当に、”今の”日本について正しい知識を得ているのでしょうか?

 他の先進国の例に漏れず、日本もまた変化の激しい社会です。私たちが日本に対し て抱いているイメージは、もはや過去の日本のそれなのではないでしょうか?


 例えば、我々は日本に対し次のようなイメージを抱きがちです。

1.日本の治安レベルは先進国中最も高い。

2.日本人は一般に宗教を好まない。

3.日本人は常に平和指向であり、戦争あるいは軍隊に対し嫌悪感に近い感情を持っている。


 私は91年から92年にかけ1年間にわたり日本に住み、日本人たちと話し、現在 のあるがままの日本を理解しようと努めました。

 結論からいうと、日本に対する上記のようなイメージは、もはや過去の遺物となろ うとしています。

 私が日本の各地を歩き、知り、感じたとこは、日本の治安の急速な悪化であり、狂 信的な宗教団体の暗躍であり、軍国主義の復活であったのです。


 日本には、「KYOSIN TANKAI」虚心坦懐という言葉があります。心を無にして、あ らゆる先入観を捨て、事実をありのままに受け入れる姿勢です。私は、私自身がそう 努めたように、読者にも「KYOSIN TANKAI」MINDをもってこれからのレポートを ご覧になることを求めます。

 なぜなら私は、この姿勢こそが正しい国際理解を生むと信じる者だからです。





          「TRUTH ON TEMPORAL JAPAN」 CHAP.1


 
 日本では、オーサカに対する慣用的な言い回しがある。即ち
  オーサカには、2種類の人間しかいない
  ヤクザと、そうでない人である
 国際的に優れているとされている日本の治安システムの中で、その欠陥が最も端的 に露呈しているのが、カンサイエリア、とりわけオーサカであると言われている。

 日本の事情に詳しい読者のなかには、治安が悪いといってもそれは日本の他の都市 に比べて、の話であって、例えばN.Y.のブロンクスのように白昼堂々と麻薬が密 売されたり、強盗や殺人、レイプが頻発するわけではなかろうと考える人もいるだろう。

私もそのように考えていた。
ドートンボリの惨状をこの目で目撃するまでは。





 その日の空は、日本に特有のどんよりとした雲に覆われていた。

 オーサカ/ドートンボリ。川沿いに沿って軒を連ねる商店、覇を競うネオン、看板 の派手さは、日本的なワビ・サビとは程遠く、むしろHONGKONGのように猥雑 でエネルギッシュだ。

 この町では、とにかく目立つことが生き残る条件らしい。

 エビスBRIDGEの脇では体操服姿の男性がバンザイをする、原色鮮やかなネオ ンサインが目立つ。両手を挙げる日本に特有の儀礼「バンザイ」は、第2次世界大戦 中タイクーンヒロヒトを礼賛する目的で老人、子供にまで強制された悪夢の儀式だ。 戦後日本は象徴天皇制へと移行したが、天皇主権国家への復帰をもくろむ極右勢力は 根強い。民主主義、自由主義を否定する極右勢力は、「バンザイ」マークを大ネオン として掲げ、あるいは菓子箱にプリントし、国民を洗脳しようと企んでいるのだ。







 貿易障壁はまだ厚いとはいえ、第3次産業を中心とした外国企業の日本市場参入は 目ざましい。今やリキシャが主な交通手段であるような農村にまで、マクドナルドの 看板を見かけることができる。

 ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)は、日本で成功したアメリカ外食産業 の代表例である。ここドートンボリのKFCも若い人で賑わっているが、他のKFC チェーン店には見られぬ奇妙な風習が横行している。

 KFCの創立者にしてシンボルでもあるカーネル・サンダースの人形に、不気味な 装飾が施されているのだ。

 黄色と黒のハッピ。黄色と黒の帽子。黄色と黒の扇子。そこかしこに描かれる、凶 暴な虎のマーク。これらは、カンサイエリアを中心として勢力を広げる狂信的宗教団 体、「モウコカイ」のシンボルカラーおよびシンボルマークだ。

 なぜカーネル・サンダースがモウコカイのシンボルに埋め尽くされるのか。その答 えを知るためには、数年前のドートンボリガワ事件にまで遡らねばならない。

 その年、ハレー彗星の大接近など不吉な予兆が相次ぎ、人心は大いに乱れた。とく にカンサイエリアでは、ヤクザ間の抗争、食品への青酸カリ混入事件など、末世を予 感させる凶悪事件が相次いだ。

 このようなとき、人はえてして神に頼るもの。モウコカイは人心の乱れに乗じ、着々と 勢力を広げていった。

 モウコカイの勢力が最高潮に達したこの年の秋、ドートンボリは「トラキチ」と呼ばれる狂信的信者たちに占拠され、一帯は無法地帯と化した。その中に運悪くい合わ せた初老の白人紳士。恰幅のよい紳士は運悪くモウコカイの司祭バアスに姿が似 ていた。トラキチたちはこれを司祭バアスに対する不敬行為として、紳士に対し モウコカイへの入信儀式・・彼らにとっての聖なる川、ドートンボリガワでの沐浴と 洗礼を強要したのである。

 モウコカイの秘儀、ドートンボリガワジャンプは、沐浴と称するにはあまりに危険な 行為だ。洗脳によって平常な感覚を消失したトラキチのみがなしうる、狂気の儀式。 初老の紳士にとってそれは、死へとむかう階段以外のなにものでもなかった。

そして世に言う「ドートンボリガワ事件」の悲劇は起こった。その後、ドートンボリガワ から紳士の死体が引き揚げられることはなかったという。

 これが、法治国家日本の裏の素顔である。イスラム原理主義者もかくやと思うほど の、狂信的宗教団体の暗躍。かくして、カーネル・サンダースはやむなく悪趣味な衣 装をまとい、モウコカイへの帰依を表明したのである。






 犯罪都市ドートンボリは、麻薬売人の巣窟でもある。

 ここで最もポピュラーな麻薬は「タコヤキ」である。

 英訳すると、「BURNED DEVIL FISH」となる。何という禍々しい 名前であろうか。

 オーサカの犯罪の80%に、「タコヤキ」が何らかの形で関与しているといわれる。

「タコヤキ」を買う金ほしさに少年達は犯罪にはしり、少女達は売春婦に身をやつす。


 私は、タコヤキ取引の実体をつかむべく、ドートンボリへと潜入した。


 ドートンボリの一角に、裏世界では有名なタコヤキ取引のメッカがある。「オオダ コ」とよばれるシンジゲートが、この一帯に縄張りをはっているのだ。

 私がこの一角を訪れたのは真昼過ぎであった。白昼から堂々と、しかも大人数に対 しタコヤキ取引が行われている。その様をまのあたりにし、私は背筋に寒いものが走っ た。

 タコヤキ売人はあたりに鋭い視線をなげかけつつ、手際よくタコヤキを製造してい る。タコヤキ中毒者たちは列をなし、製造されたタコヤキをかたっぱしから買い漁る。 列のなかには、年端のいかぬ子供までいる。彼らの目は、一様にうつろだ。

 タコヤキを手にいれた中毒者たちは、禁断症状に耐えかねたのか、すぐ近くの橋の 欄干で早速タコヤキを摂取する。緊張に震えていた彼らの顔は、タコヤキを摂取した とたん恍惚の表情へと変わる。恐るべきタコヤキの魔力だ。

 私は意を決し、タコヤキ売人への接触を試みようとした。中毒者を装い、タコヤキ を求める列の最後尾に並ぶ。

 日本の友人である光デパートに、カンサイにおけるコミュニケーションの基本は以 下のようなものであると教えられていた。

 1.言葉ははっきり、大きく、テンポよく発すること。

 2.決して標準語で話してはならない。その土地の方言で話すこと。

 いよいよ私が購入する番が巡ってきた。

 私はまず、タコヤキの値段を聞くことにした。HOW MATCH IS THIS? オーサカ弁に 訳すと、「なんぼのもんじゃ、われ」となる。

 私は大きく息を吸い込み、売人に向かって叫んだ。

「なんぼのもんじゃああああああ!!われぇええええええええ!!」

 一瞬、売人の顔が強張った。あたりの客もどよめく。私が中毒者でないことが、ば れたのであろうか!しかしここでうろたえていては、更に相手に不信感を与えること になりかねない。私は平静を装った。

 ところが、そこで信じられないことが起こった。

 警察官が駆けつけ、売人を捕まえるどころか、私に尋問をし始めたのだ!!

 オーサカ府警は、シンジゲートに買収されていたのである。身に危険を感じた私は、 警察官の制止を振り切り逃亡した。巨大な蟹の看板が、あざけ笑うかのように足をバ タつかせていた。

 以上が、今回のリポートである。

 日本を浸食する極右勢力、狂信的宗教団体、そして麻薬。日本の治安システムも、 今曲がり角にきている。

 次回は、台頭する軍国主義についてレポートしよう。

                               H.DEPARTMENT
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